
今回は生活保護法の翻訳の第一章(第一条~第六条)です!
第一条 この法律の目的
第一条 全文
第一条
この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。

これが生活保護法の第一条です。
それでは細かく解説していきます。
第一条 その1
この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、
日本国憲法第二十五条はいわゆる「生存権」です。
「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」というやつです。
生活保護法はこの考えを元にして作られています。
第一条 その2
国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、
生活に困っている国民の全てを保護すると書いてあります。
どれくらい困っているかによって保護の手厚さは変わるようです。
第一条 その3
その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。
保護する目的は最低限の生活を保障と自立の支援だと書いてあります。
餓死や凍死しないように保護して、仕事探しを手伝うというわけですね。

とても素晴らしい仕組みですね。
しかし、ここで一つ疑問が浮かびます。
日本はブラック企業がたくさんあります。
安月給で残業だらけでパワハラ地獄の仕事がたくさんあります。
そういう仕事をしている人は「最低限の生活」が保障されているのでしょうか。
受給者をそういう仕事に就職させる役所の職員は正しいのでしょうか。

仕事をしていても最低限の生活が保障されるわけではないのです。
ブラック企業に入るくらいなら働かないのが憲法的には正解です。
第二条 無差別平等
第二条
すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護(以下「保護」という。)を、無差別平等に受けることができる。
全ての国民が差別なく平等に生活保護を受けられるという内容です。
この法律の定める要件とは、「生活に困窮(困る)していること」です。
これは第一条に書いてありましたね。
生活に困ってさえいれば生活保護を受けられます。
生活に困っているかは「お金」があるか無いかで決まります。

「働けるか」は関係ありません。
働ける状態でもお金が無ければ生活保護を受けられます。
調査されるのは収入と貯金だけです。
ここを勘違いして「働ける人は生活保護は受けられない」と思っている人が多いです。
役所の職員でさえ勘違いしていることもあります。
お金に困っていれば全国民が差別なく平等に生活保護を受けられます。
今の生活に困っているのなら、役所か相談所に収入と貯金の額を伝えてみましょう。
第三条 最低生活
第三条
この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。
第三条では第一条に書いてあった最低限度の生活を詳しく説明しています。
第一条には「健康で文化的な」という単語が書いていなかったので、
内容の不足をフォローする形で第三条が定められています。
憲法25条の「生存権」を強く意識していることが分かります。

ちょっとややこしくてめんどくさいですね~。
第四条 保護の補足性
第四条 全文
第四条
保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2 民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
3 前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。
補足性は簡単に言うと「頑張っても無理だった分だけ補って足す」ということです。
「頑張って売れるものは売ったけど生活できるほどのお金にならなかった」
「頑張って働いた(就活した)けど十分な収入が無い」
というのが生活保護を受けるための条件に含まれるということです。
生活保護はそれらの足りなかったお金を補う形で支給されます。

長くてわかりにくいので分解します!
第四条 保護を受けていても頑張る必要はあるという内容
保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
生活に困っていても資産や能力がある人はいます。
そういう人はそれらを最大限に活用してお金を作ることを求められます。
・都会は車が無くても生活できるので車を売ってお金にする
・株を売却したり貯蓄型の保険を解約してお金を作る
・普通に働けるのならできるだけ働いて給料で生活費を補う
・軽度の障害者なら障害者用の労働施設で働いて給料をもらう

フルタイムで働いても最低生活費を稼げないブラック企業もあります。
そこもちゃんと考えなければいけません。
ブラック企業で働くと健康で文化的な最低限の生活ができなくなります。
就職先がブラック企業しかない場合は働かなくてもいいはずです。
働ける能力があるのに働かないのは生活保護法に違反しますが、
残業代を払っていない会社も違法なのでそういう会社に勤めるのもアウトですよね。
第四条 保護よりも扶養義務者の扶養を優先するという内容
2 民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
扶養義務者の扶養を簡単に言うと「身内が養う」ということです。
身内に養う能力がある場合は、身内に養う義務があるので生活保護は受けられません。
しかし、養うことで身内の生活が苦しくなる場合は養う義務はありません。
さらに、身内とのトラブルがある場合はそもそも身内に連絡されません。
また、日本には生活に困っている人を金銭的に助けるための法律が他にもあります。
生活保護はそのあらゆる法律を活用した後の最後の手段とされています。
なので、他の法律に定める扶助を生活保護よりも優先すると書いてあります。
「扶助」は簡単に言うと「助ける」という意味です。

これらの法律はそこまで重視されていないように思えます。
生活保護を申請したときに身内に連絡される扶養照会というものがあります。
これは身内との関係が悪いと伝えると拒否することができます。
身内にばれると精神的にダメージを受ける人も多いのでこの法律は良くないです。
また、他の法律の扶助は現状あまり意識されていないようです。
第四条 急ぎの時はすぐに保護できるという内容
3 前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。
(この法律の解釈及び運用)
急迫した事由とは簡単に言うと「急いでお金を渡す必要がある理由」です。
急迫した事由がある場合は、親への連絡などの優先度は下がります。
法律には生活保護は最終手段と定められています。
これが理由で、身内や他の法律の助けが不十分な時にだけ使えるように決まっています。
しかし、お金が無くて何日もごはんを食べていないような人もいます。
そういう人が来た時は条件を調べるよりも早くお金を渡さなくてはいけません。

法律には難しく書いてありますが申請は単純です。
収入と貯金が少なければ大体は普通に通ります。
生活保護法は複雑なのでたぶん役所の職員もちゃんと理解していません。
ガバガバで通してくれるかやたら拒否されるかのどっちかでしょう。
第五条 この法律の解釈及び運用
第五条
前四条に規定するところは、この法律の基本原理であつて、この法律の解釈及び運用は、すべてこの原理に基いてされなければならない。

「第四条はとても大事です!」
という宣言ですね。それ以上の意味はありません。
どうやら第四条はとても大事なようです。
わざわざこういうことを書くのが法律のわかりにくいところですね。
第六条 用語の定義
第六条 全文
第六条
この法律において「被保護者」とは、現に保護を受けている者をいう。
2 この法律において「要保護者」とは、現に保護を受けているといないとにかかわらず、保護を必要とする状態にある者をいう。
3 この法律において「保護金品」とは、保護として給与し、又は貸与される金銭及び物品をいう。
4 この法律において「金銭給付」とは、金銭の給与又は貸与によつて、保護を行うことをいう。
5 この法律において「現物給付」とは、物品の給与又は貸与、医療の給付、役務の提供その他金銭給付以外の方法で保護を行うことをいう。
これからの法律の説明で出てくる単語の定義が書いてあります。
第六条は定義の説明だけです。

長いので一つずつ分けて解説します。
第六条 「被保護者」の定義
この法律において「被保護者」とは、現に保護を受けている者をいう。
すでに生活保護を受けている人を「被保護者」と定義するようです。
これについて特にコメントすることはないですね。
第六条 「要保護者」の定義
2 この法律において「要保護者」とは、現に保護を受けているといないとにかかわらず、保護を必要とする状態にある者をいう。
生活に困っていて保護を必要としている人を「要保護者」と定義するようです。
現在生活保護を受けている人もまとめて「要保護者」と呼ぶみたいです。
第六条 「保護金品」の定義
3 この法律において「保護金品」とは、保護として給与し、又は貸与される金銭及び物品をいう。
生活保護で生活を支援するために渡すお金や物を「保護金品」と定義しています。
あげるのではなく貸すだけの時でも「保護金品」と言うようです。
第六条 「金銭給付」の定義
4 この法律において「金銭給付」とは、金銭の給与又は貸与によつて、保護を行うことをいう。
生活保護でお金を渡したり貸したりすることを「金銭給付」と定義しています。
現金をあげるだけではなく貸す場合もあるみたいですね。
第六条 「現物給付」の定義
5 この法律において「現物給付」とは、物品の給与又は貸与、医療の給付、役務の提供その他金銭給付以外の方法で保護を行うことをいう。
現金を渡す以外の方法で支援することを「現物給付」と定義しています。
医療費無料や役所の手続き、物の貸し出しとかを現物給付と言うみたいです。

法律は厳密な話をするので定義が大切になってきます。
これをちゃんと知っておくことが必要ですね。
大事なのは生活保護を受けている人も「要保護者」と呼ぶこと、
医療や役所の手続きのようなサービスも「現物給付」とみなすことくらいですね。
第一章終わり

第一章の内容は終わりです!
この法律の基本の内容でした!
簡単に言うと、生活保護は困っている人のための法律ということです。
働けない人ではありません。働いていても収入が低ければ保護を受けられます。

それでは次は第二章です!